« [司法][光市母子殺害事件]主張変更の理由など、法曹なら理解していると思ったのだが | トップページ | [司法]橋下徹弁護士への公開質問状・・・・の転載 »

2007年10月 1日 (月)

[司法]橋下徹弁護士が言う「説明責任義務」など、やはり後付けな件について

 橋下徹弁護士が、光市母子殺害事件の差し戻し審弁護団への懲戒請求を煽った件の番組がYouTubeにあった。橋下弁護士は訴えられた後の会見やblogで、「(いわゆる)荒唐無稽な主張の是非は問わない。弁護団は説明責任を果たしていないことが懲戒事由に当たる」旨の発言を繰り返している。

 どうも、論点がずれているような感じがする。橋下弁護士の「扇動」が不法行為に当たるかどうか、問題は橋下弁護士が件の番組で、どういう文脈で懲戒請求を扇動したか、じゃないか。では、実際、懲戒請求を呼びかけた時の発言はどうだったのか。

 結論から言うと、完全に弁護団主張・法廷戦術(いわゆる荒唐無稽な内容)こそが非行(懲戒事由)に当たる、と言っているようにしか理解できない。
 「説明責任」など、完全な後付けなのだ。もう、分かっている人は気がついているのだけど、簡単に整理しておく。

 YouTube - 森本敏「弁護士っていう者を公的に資格を奪うっていう方法はないんですか? (※本当はEmbedリンクを貼りたいのだけど、面倒が起きると嫌なのでやめた。これについては別の機会で)

 やしきたかじん氏 まず、そういう場をね、死刑廃止論者の談合の場にしてはいけないよ。
 (略)・・・21人も集まりやがって、えっ、お天道様に向かってお前らホンマそんなこと真剣に言えると思てんのか、馬鹿者。出てこい、一人で相手したる、俺が。
 君どう思う、これ。

 橋下弁護士 いや、残念というかね、弁護士っていうのもこんなもんなのかなと。あの21人の弁護団の中で、特にあの安田って弁護士はね、あれもうホント弁護士バッジとらないといけないはずなんですよ。
 というのは光市の、もともと最高裁の弁論という期日をですね、日弁連の模擬裁判のその、なにかリハーサルがあるってことで欠席・・・(出なかったやろ)、ファックス一枚最高裁に流して、でー、欠席したと。
 それに対して広島の弁護士会の方は、まぁ安田って弁護士ではない、広島の方の担当弁護士ですかね、懲戒事由に当たらないと、あれも一つのあの弁護活動だということで、懲戒を棄却しているんですね。
 いったい、弁護士が懲戒されるとはどういことやねんと。
 たかじんさん言ったようにね、(いわゆる「荒唐無稽」な主張)ということを、堂々と21人の、その資格を持った大人が、吹聴(主張?)するということ、これはね弁護士として許していいのかと

 宮崎哲哉氏 弁護士というもののね、世の中の評価をどんどん下げている。

 橋下弁護士 もう、あれこそ非行・・・(宮崎氏割り込み)

 宮崎氏 (略)これね、明らかに政治運動ですね。

 橋下弁護士 だから1、2審で仮にそういう主張が出ていたら、これはもう弁護人としてやむ得ないところあります。国家権力に対して唯一その被告人を代弁するということで、言わざるを得ないんですけど、明らかに今回は、あの21人というか、あの安田って弁護士が中心になって、そういう主張を組み立てたとしか考えられないですよ。

 こんな流れで、橋下弁護士は特に安田好弘弁護士をやり玉にあげながら、いわゆる「荒唐無稽な主張」について批判していく。
 <堂々と21人の、その資格を持った大人が、吹聴(主張?)するということ、これはね弁護士として許していいのか>、宮崎氏が割り込んでやや聞き取りにくいが<あれ(荒唐無稽な主張)こそ非行・・・>と。

 さて、問題の懲戒請求を煽るシーン。

 ?氏 弁護士の、公的に資格を奪う方法ってのはないんですか?(略)制度がおかしい。

 橋下弁護士 弁護士自治・・・(略)弁護士会が唯一懲戒権を持っていて、で・・・、僕ね、ホントねテレビ使わさしてもらって、もしカットされたらしょうがないんですけど、全国の人ね、あの弁護団に対してもし許せないと思うなら、一斉に弁護士会に対して懲戒請求をかけてもらいたいんですよ。
 いま弁護士会の方に、1人の弁護士に、まぁ、僕なんか何十件もやらるんですけども(会場笑)、2件、3件来ただけで、もう弁護士会、大あわてなんですよ。
 ぜひね、あの懲戒請求ってのは誰でもかれでも簡単に、弁護士会行って懲戒請求立てられますんで
何万何十万という方たち、あの21人の弁護士の懲戒請求をたててもらいたいですよ。

 もちろん、ここまでに「説明責任」なんて言葉はひと言も出てこない。この文脈で、<あの弁護団に対してもし許せない>その根拠は、まさに「荒唐無稽な主張」であること以外に読み取りようがない。
 この番組に台本があるのかどうか知らないが、どうも資格剥奪について振られた橋本さんは、自身も煽られるように、一呼吸も置かないで懲戒請求を説明した勢いのまま口を滑らせたようにも見える。実際この部分、喋るスピードが速くて、手練れの俺も起こすのにちょっと難儀した。

 さてもっとも、橋下弁護士は番組中で一応、説明責任らしきことに触れている。

 橋下弁護士 1審でもし(被告人が荒唐無稽な主張を)言ってたらですよ、しょうがないんですよ。だから、そうであれば法廷で、なぜ1,2審で言わずに、この差し戻し審になってはじめてそういう主張をしたのかってことをきちんと説明しないと、あれもう訴えるも何も、だから懲戒請求でホント1万、2万とか10万人くらい、この番組見ている人が一斉に弁護士会に行って懲戒請求かけてくださったらですね、弁護士会の方としても処分出さないわけにはいかない。

 その後、橋下弁護士が会見などで語った「懲戒請求を呼びかけた理由」は、だいたいこんなものだ。例えば。

 まずね、今回の弁護団の弁護方針が何ゆえいわゆる懲戒事由にあたるのか、(略)
 今回の弁護団の
主張が荒唐無稽であること、あまりにもふざけた内容であること、この点については批判はしません
(略)
弁護団の主張が通るかどうかは、裁判所の判断に任せることだし、上記のような限定付きで弁護団として荒唐無稽な主張をすることはやむを得ない場合もある。
(略)

一言で言えば、説明義務違反、被害者に対して、国民に対してのね。
 =橋下徹のLawyer’s EYE  光市母子殺害事件弁護団緊急報告集会出席報告(3)

 さすがに、弁護団の主張が「世間基準から無茶苦茶だ」という理由をもって懲戒事由に当たるというのはそれこそ無茶苦茶だと気がついたのか、弁護団の緊急集会に出席して、それまでの経緯や事実関係を一応は知ったのだろうか、上記番組とは明らかに懲戒請求の根拠が変わってる。

 橋下弁護士は訴えられた後、別の番組で「生激白」している。
 YouTube - 訴えられた橋下弁護士"真意"生激白 (1) / YouTube - 訴えられた橋下弁護士真意生激白 (2)

 週刊朝日の編集長に突っ込まれた橋下弁護士がもうグダグダなのでいちいち起こさない。だいたい、以下のような発言をしている。

 なぜ、テレビで懲戒請求を扇動したのか?という問いに、

 「法廷戦術自体が違法、非行だとは言ってない」
 いや。件の番組では「主張自体が非行である」旨、明確に発言している。

 「今回問題にしたのは、果たして弁護士は被告人のためだけを考えていいのか、国民が不信感を感じた時には、ちゃんと説明しなければならないと。それに応えなければならない」
 「刑事弁護人は、凶悪犯の弁護をします。ですから原告が言うよう、社会的に偏見を持たれたりとか、まぁ、もたれているんですが、それはひとえに、弁護士サイドが、弁護士会がきちんと国民にね、刑事弁護人の役割を説明しなかったことの結果だと思っているんです」

 ただでさえ偏見を持たれる刑事弁護について、「国民にね、刑事弁護人の役割を説明しなかった」どころか、最低限の事実関係も確認しないまま、「堂々と21人の、その資格を持った大人が、吹聴(主張?)するということ、これはね弁護士として許していいのかと」と弁護団への憎悪を煽ったのは橋下さん。その橋下さんはもちろん、刑事弁護の役割を説明すべき弁護士の一人です。

 ここで橋下弁護士は、福岡の飲酒事故や和歌山カレー事件を挙げ、それら弁護士には懲戒請求は出ていない。今回の事件は世間の(弁護士への怒りの)臨界点を超えたからこれだけ懲戒請求が出た、というようなことも言っている。しかし、約4000件もの懲戒請求が申し立てられたのは、明確な因果関係を証明できなくても、橋下弁護士が扇動したから、ではないのですか。

 ところで、くだんの番組(5月放送ということを割り引いても)では、相変わらず上告審での欠席を非難している。当時「ドタキャン」というマスコミ扇動に煽られて弁護団バッシングのきっかけともなったのだけど、これも実態が正確には伝えられてない。
 また、相変わらず死刑廃止運動に利用しているというテンプレ批判も繰り広げられてて、これも事実と違う。

アクセス解析アクセスランキング

|

« [司法][光市母子殺害事件]主張変更の理由など、法曹なら理解していると思ったのだが | トップページ | [司法]橋下徹弁護士への公開質問状・・・・の転載 »

コメント

橋下氏、商工ローンの顧問弁護士だった!

 雑誌『週刊新潮』は1月17日号で、大阪府知事選に立候補している弁護士でタレントの
橋下徹氏(自民党大阪府連推薦・公明党大阪府本部支持・新風自主支援)が、
過去に商工ローンの顧問弁護士を務めていたと報じた。

 記事によると橋下氏は、”みなし弁済”規定をタテに利息制限法を超える高利を取っていた
商工ローン『シティズ』の顧問弁護士を1999年から2004年まで務めていたといい、
関係者の話として「債務者からの訴訟でも会社を勝利に導いてきた」と伝えた。

 また、記事の中で自民党関係者は、「昨年12月に行われた大阪市大正区の市議補選で
橋下氏に応援演説を打診したところ、”市議の補選ごときで”という態度だったという」と語った。

橋下 商工ローン - Google 検索
http://www.google.co.jp/search?q=%8B%B4%89%BA+%8F%A4%8D%48%83%8D%81%5B%83%93

投稿: hashinoshita | 2008年1月19日 (土) 10時55分

コメントありがとうございます。
因果関係の証明は、それほど難しくないのかな、とも思いますがいかがでしょう。第三者としては、ブログに書くかただ見つめているしかないんですけど。今後とも、よろしくお願いします。

投稿: 管理人@踊る新聞屋-。 | 2007年10月12日 (金) 01時15分

はじめまして。清高です。
やはり、橋下先生、主張を変えてますよね。
それにしてもよく書けていますね。感心しました。
なお1点、「約4000件もの懲戒請求が申し立てられたのは、明確な因果関係を証明できなくても、橋下弁護士が扇動したから、ではないのですか。」についてですが、いくら書式がインターネット上にあっても、私がブログサーフィンした限りでは、懲戒請求の根拠は橋下弁護士のコメントが多いようでしたので、因果関係が証明されることを期待します。

投稿: 清高 | 2007年10月 2日 (火) 20時14分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104998/16634179

この記事へのトラックバック一覧です: [司法]橋下徹弁護士が言う「説明責任義務」など、やはり後付けな件について:

« [司法][光市母子殺害事件]主張変更の理由など、法曹なら理解していると思ったのだが | トップページ | [司法]橋下徹弁護士への公開質問状・・・・の転載 »