[因果と相関][共分散] 「早起きの子どもは学校が好きで楽しい」。それはそうだって
「タバコを吸うとバカになる」という調査が以前、アメリカであった。大学生の喫煙習慣と成績の相関関係を調べると、喫煙する方が成績が悪いという結果が出て、これを一歩進めると、「タバコを吸うとバカになる」と相成るわけである。
しかし、冷静に考えると、これはおかしい。タバコと成績の間に相関関係はあるとしても、因果関係ははっきりしないのだから。
成績の低い一般には無知な学生ほど、喫煙習慣を身につける、という解釈も可能だ。あるいは、遊ぶ学生ほど喫煙習慣を身につける可能性が高い、とか。
あんまりこの話題を進めると禁煙ファシストの虎の尾を踏むので本題に。
今日行く審議会@はてな - そろそろこういうの止めにしませんかから、[朝の“和食派”「学校楽しい」 早起き、睡眠適度 千葉大教授ら小5調査 生活リズムに好影響] / 社会 / 西日本新聞、[sahi.com:「早起きの子どもは学校が好きで楽しい」 3都県調査 - 教育について。
「今日行く審議会」さんは「こういう話に対してはまともに反論する気が起きない」と匙を投げておられるのだけど(それはそうだよなぁ)、最近、この手の「朝食を食べる子は成績がいい」的調査が流行のようで(「規範意識」「親学」の亜流かね)、非道い誤解を生じている。
この手の誤解、誤謬は統計の歩みから始まったものらしい。
つまり、「B(成績不良)がA(喫煙)に続いて起こるなら、A(喫煙)はB(成績不良)の原因である」と短絡する間違いである。
相関関係を示す数値を共分散というが、共分散で分かるのは相関関係だけで、因果や結果は分からない。あとは、調査者やデータを受け取った人間の解釈次第となる。
「喫煙」の場合、そもそも調査の仮定が「喫煙する学生は成績が悪いはずだ」などと設定されているので(でなきゃ、こんな調査しないだろ)、思い通りの結果が出ると、「喫煙する学生はバカ」と短絡してしまうのである。
因果関係を知りたければ、共分散の構造を解析する必要があるが、この種の調査でそこまで手をかけた例というのは、ほとんど見当たらない。
こうしたまやかしでは最近、「歯が多く残っている老人は医療費が低い」というデータがある。
歯科医や歯磨き粉メーカーの宣伝にも使われるのだけど、本当でしょうかね?
そりゃ、歯が残っている老人は健康でしょう。しかし、これまた因果は不明だ。むしろ、歯が抜ける主な原因である歯周病は、免疫の低下によって起きるので、不健康だから歯が抜けた-と解釈するのが、妥当かもしれない。
それに、医療費の多寡は、健康度合いとは比例しないのである。
こうした相関関係は一見、社会通念と照らして間違っていないから、妙な説得力を持ってしまう。
冒頭の「早起きの子どもは学校が好きで楽しい」は、その典型だ。
しかし、「学校が嫌いで楽しくない」から「朝、起きられない」可能性だってあるわけだ。俺なんか、仕事が煮詰まると朝食に関係なく、出社拒否気味だし。
早寝早起きとバランスのいい食事が生活や健康に良いというのは、それはそうだろうとしか言いようのない話にすぎない。問題は、それがしたくてもできない家庭、そういう環境を得られない子どもがいることなのだ。
秋には、先に実施された全国学力ストと併せて行われた「生活状況調査」の相関関係が大々的に世間を賑わすだろう。
「図書館に行く子は成績が良い」とかなんとか。
さて、俺は統計についてはほとんど知らず、これ以上やると怪我のもとになるので、なんでこういう記事が出てくるのかを考えた。ってか、この手の記事を書いたことがある。
仮に、凸凹大の○○教授から、こんなリリースかレクがあって、さあ、どんなもんかと内容を見てみる。
運良くその段階で、どうも調査としては不十分じゃないかと気がついたとする。そこで、統計の専門家にこのデータを持ち込み、「因果関係を知るには、調査として不十分」とコメントをもらったとしよう。
これをこのまま、記事に書けるか?
「凸凹大の○○教授の調査でわかった。しかし、統計の専門家は、不十分な調査だと指摘している」とか。
書けるわけがない(苦笑
○○教授は怒るだろうなぁと思うし、教授に直に調査の不十分さを指摘するには気が引ける(笑) それなりに親しければ議論することもできようが。
かといって無視しようとしても、この手の調査はいまの流行り、しかも関心の高い教育・子育て問題で「どうもA紙は県版でなく東京本社版に載せるようだ」とか聞こえてくると、スルーするわけにもいかないし。
そうなると「まっ、発表どおり書いておけば良いんでない。どうせ発表者の責任、俺の責任じゃないし」となるわけで、こうして世の中は回っていくのである。アハハ。
だから俺は、この手のリリースを見たら、見なかったことにするか後輩に振る。それが、せめてもの良心だ(ウソ、責任回避だ(ホントウ
↓「タバコと成績」のネタ本はこれ。1968年初版の古典だけど、人間は40年前から同じ手に踊らされているということがよく分かる名著ですよ。
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