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2007年4月19日 (木)

[逆学歴詐称]可視化されてきた学歴インフレ

 大学進学率が急上昇した1970年代以降、学歴と職業のミスマッチ、いずれ大卒者の数に見合うほどの大卒者向け職業が社会的に用意できなくなるのではないか、という「学歴インフレ」が懸念されたことがある。
 産業化が遅れた社会では事実、高学歴者を吸収する産業がないゆえにその失業が社会問題化した。しかし、少なくとも日本では学歴インフレが顕在化することはなかった。

 一つは、かつて高卒がやっていた仕事を大卒が、高卒がやっていた仕事を中卒が-というような学歴と職業の対称関係がスムースに変化したこと、一つは高度成長で大卒ホワイトカラー(WC)に対する絶対的な需要量が増して、大卒者を社会がうまく吸収できていた、といような説明がされる。

 大阪市職員400人学歴詐称、大卒者が高卒枠で就職
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070414-00000001-yom-soci

 <400人を一斉に停職にして業務に問題がないってどれだけ税金の無駄してるんだよ@404>という至極もっともな突っ込みが興味深いがそれはさておき、実は日本でも学歴インフレが起きていたのだけど、可視化しなかっただけ、だったりして。

 人々が教育を求めるのは、産業の高度化によりより高い技術と専門的知識を必要とする職業が増えたから、いわゆる「技能機能主義」と呼ばれる見解がある。
 これが現在、世間でもっとも受け入れられている説明ではあるが、実は多くの人が気付いているよう、学歴と職業遂行能力に相関関係はなく、むしろしばしば乖離する。田中角栄さんと今の首相を比べれば、それは明らか…だと思う。

 社会の階層、階級がリアルにある欧米では、「技能機能主義」のような学歴により一見には正当と見られる区別が、実は学歴に到達するまでの社会的不平等を隠蔽・正当化するとして、しばしば批判されてきた。例えば、アメリカの社会教育学者ランドール・コリンズなど。つまり、技能機能主義は職業遂行能力に関係なく学歴による差別を正当化し、マイノリティに多い低学歴者はその低学歴ゆえに低い地位に甘んじなければならない、という論理に帰結するからだ。

 学歴と職業遂行能力は比例しないことは、一般にもそれなりに認識しているにもかかわらず(職業遂行能力が高いにもかかわらず学歴がないため出世できない人の苦労話に共感する人は多いし、田中角栄さんはじめ小卒の政治家、起業家が称賛されるのもこうした深層認識によるのだろう)、しかしでは日本を含めてなぜ人々は学歴を求めるのだろうか。

 それは、世の中のほとんどの人は、腕一本で稼げるほどの能力もなく、学歴を得ることが社会の中でより優位な位置を得るのに最も手っとり早いからだ。一方で学歴主義やテストで測られる学力に疑問を持ちながらも、一方で自分や自分の子にはよりよい学歴、点数を求めるのもそうした利己心からである。もちろん、利己心を否定されるものでもない。
 東大合格者は少なくともその時点では、無能者の群れのエリートに過ぎない。東大合格者は年1000人以上もいるが、松坂やイチローは何年かに一人の人間である。仮に文化・芸術・スポーツetc…腕一本で稼ぐ才能があるなら、学歴など不要であり、むしろ学歴を得るのにかける時間や費用はまさしくコストになるだけなのだ。

 実は日本でも、戦後ずっと社会環境や親の職業による学歴の再生産、つまりWCの子弟ほど高学歴であるという事実がある。しかし、階層や階級がリアリティを失い、だれもに平等に開かれたように見える教育制度により、そうした学歴取得に至るまでの不平等には目が向けられず、批判の矛先は学歴主義、国家Ⅰ種試験に代表されるよう、一発の学歴や資格試験がその後の人生を固定化させる装置になっている、という視点からの批判がもっぱらであった。
 もちろん、学歴主義には、出自を問わずより高い学歴を持てばより成功や安定に近づけるというプラス面もある。

 と、実はここまでは「大衆教育社会のゆくえ-学歴主義と平等神話の戦後史」をパクってアレンジを加えただけです。すいません。

 で、修了者と吸収する場の増加が著しくミスマッチしたオーバードクターがすでに社会問題化している。これに比べ、そのサイクルが緩やかな大卒者のミスマッチというのは、ほとんど顕在化しなかった。

 ただ高度成長も終わり、経済がネオリベ化すれば、企画研究開発などの業務に関わる極少数の正規雇用者と、それを取り巻く多数のいつでも解雇可能な単純非熟練労働者という極端な二極化、中間WC層の消失を加速させるので、インフレ化した大卒者はいっそう被吸収場所を失うことになる。
 そうなれば、そこ違う!イタイ!って所に大卒者が入っちゃうのも当然であって、高卒者向け公務員試験など美味しいターゲットである。学歴インフレもついに可視化してきた、というところなのではないだろうか。逆学歴詐称は他にもあるんでないか、絶対。

 意識したかしないかを問わず、社会でより優位な立場を得ようとして大学を出たのであれば、大卒者同士の土俵で椅子獲りゲームに参加しなければならないのに、途中で土俵変えたのではやっぱり卑怯者と呼ばれてしまうよなぁ。
 ヘビー級のボクサーがミドル級に出てくるようなもんだ。

 このまま大卒者が増える一方、大卒者の吸収場所がますます減少すれば、学歴インフレによる高学歴者の失業とか職業とのミスマッチというのは、ますます社会問題する。大学を大幅にスクラップして入学定員を絞るか、学歴と職業の対称関係をドラスティックに見直す必要があるのだろうけど、それには摩擦も大きい。
 むしろゆるやかに大学間の社会的認知格差、大学と名は付くものの社会には大学とは認識されない大学と、東大を頂点とした有名大学が、そもそもまったく別物と認知されるようになるのかもしれない。現在でも半ばそんな感じだけど、曖昧な問題処理が善くも悪くも日本的だ。
 そのうち、役所の試験も、旧帝大早慶上位学部、国公立有名私大、それ以外の大学、中州産業大学or高卒者、なんて予備校みたいな区分けになったりして。

< 大阪市職員約4万5000人のうち400人以上が、学歴が大卒や短大卒なのに「高校卒」と偽り、受験資格が高卒以下に限定されている職種で採用されていたことが、市の調査でわかった。
 自治体職員の就職時の虚偽申告は昨年6月以降、神戸市(36人)や兵庫県尼崎市(2人)で発覚し、両市は諭旨免職としたが、大阪市は、こうした職員が業務を支障なくこなしているうえ、「これだけで安定した生活を奪うのは厳しすぎる」として停職1か月の懲戒処分にとどめる方針。
 神戸、尼崎両市で発覚後、大阪市にも「学歴を偽った職員がいる」などの通報が寄せられたため、市は3月9日から全職員の調査を始めた。同月29日までに申告すれば停職1か月だが、その後に判明したら懲戒免職にすると伝えたところ、申告する職員が多く、期限を今月20日まで延長した。最終更新:4月14日3時22分>

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