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2007年4月10日 (火)

石原慎太郎さん曰く、阪神大震災「首長の判断が遅くて2000人が死んだ」は事実、なのか

 石原慎太郎さんが三選を決めた直後からすっ飛ばしている。阪神大震災での自衛隊の災害出動要請に関して「首長の判断が遅くて2000人が死んだ」とか。
 http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/senkyo/news/20070410k0000m040068000c.html
 これには変形があって、当時村山富市首相が自衛隊の出動を認めず「数千人を見殺しにした」という。

 当時の政府のドタバタぶりはまだ記憶に新しいので、「なるほど!」と聞き流せそうな話ではあるけど、webをちょこっと巡回するだけで、これはどうも事実とはほど遠い、ということが容易に分かる(詳細は「続きを読む」以下)。

 もちろん、自衛隊の災害出動が早いに越したことはないけど、自衛隊を含めた公助には限界があり、災害対応については近年、自助と共助(互助)、公助の適切な組み合わせと「減災」がキーワードになっている。

 「首長の判断が遅くて2000人が死んだ」というような、一見なるほどそうだその通りごもっともけど事実誤認の物言いというのは、災害対策にとって有害なだけじゃないですか。

 神戸市のwebにある関連DBから。

 ■死亡時間別死者数

 <この表は、兵庫県警察で認知した災害による死者(地震に関連して生じた疾病による死者=いわゆる震災関連死は含まない)5480人のうち、身元不明遺体9体を除く、5471人の死亡時間別状況を示したものである。兵庫県南部地震の地震発生は5時46分であるから死者の6割は即死状態(午前6時までに死亡)であったことがわかる。

 「不明」を含め即死ではなかった方が、亡くなった方の4割、実数で2205人。どうも、この2205人の方をもって「早期に自衛隊に出動要請があれば2000人が助かった」ことの根拠になっているのかな。

 では、自衛隊への災害派遣要請が早ければ、2000人の方は助かった可能性はある、のか。

 兵庫県の井戸敏三知事が石原さんに反論して「自衛隊派遣の有無と犠牲者の数は脈絡のないこと」と断言している。
 根拠が分からないので勝手に推測すると、wikipediaからの引用だが、下記のよう。

 <出動した自衛隊も、交通渋滞や被災者がひしめく中で部隊の移動・集結・宿営地の造営に手間取り、大規模な災害派遣部隊が現地に展開されて助活動を開始するまでに3日間を要した(政治判断に3日を要したわけではない)。

 また、自衛隊への出動要請は、以下のような状況であったらしい。

 <本市域を管轄する自衛隊は,伊丹市に駐屯する陸上自衛隊第3師団第36普通科連隊である。午前6 時10 分頃・助役から消防本部及び建設部に対する緊急措置指示があり,救助救出活動に当たっていたが,救助救出を求める市民が殺到し,救助要請に抗しきれない状況であった。このため助役は,消防本部に対して自衛隊への災害派遣要請を指示したこれを受けて兵庫県及び阪神県民局への電話通報に当たったが発災後の電話もつながらない混乱した状況下で,電話不通のまま時間が経過した。やむなく,伊丹市に駐屯する第3師団第36普通科連隊への直接通報を試み,午前11時30分頃の災害派遣通報となった自衛隊にあっては,この時,既に,芦屋市の被災状況を偵察するため,連絡幹部が派遣されていた。
http://sinsai.fdma.go.jp/search/abstract.php?TOSHO_ID=L0031705&DATA_ID=0014&LEGAL_ON=1

 一方、政府はどうかというと。
 思想信条の理由で自衛隊への出動要請をためらったとしたら、それはもう困った話なのだけど、当時の村山富市首相は実は、ただ右往左往していただけのように見える。
 また、wikipediaからの引用で恐縮であるが、大筋で間違いはなさそうだ。

・村山はなぜ自衛隊派遣が遅れたのかを問われ、「なにぶんにも初めてのことですので」と答弁し、内閣支持率の急落に繋がった。この村山内閣の対応の遅れは、広く国民から強い批判を浴びた。

・自衛隊出動命令の遅れは、法制度上、地元・兵庫県知事貝原俊民の要請がなければ出動できなかった点が挙げられる。当日午前8時10分には、陸上自衛隊姫路駐屯地(防衛庁側)から兵庫県庁に対し出動要請を出すよう督促されている。また、午前10時前には自衛隊のヘリコプターを飛ばし被災地の情報収集を行っている。しかし、貝原が登庁したのはその後で、さらに現況の把握に時間が費やされた。最終的に、貝原の命令を待たず兵庫県参事(防災担当)が出動要請を午前10時10分に行い、その4分後の午前10時14分には自衛隊が出動している

※上記、神戸市DBの記述とは経緯が異なる。

・一方で、災害対策基本法105条に基づく各種の強制的規制の適用により、内閣総理大臣に権限を広く集め、効力のある「緊急災害対策本部」を早急に作ること等が可能であった。しかし、村山内閣成立に伴い、「自衛隊は違憲状態」との日本社会党の基本政策を、村山が半ば強制的に急転換した経緯もあり、日本社会党左派への配慮のため、長年、政権与党で日本の防衛・防災体制を担ってきた自由民主党出身閣僚の防衛庁長官玉澤徳一郎、国土庁長官小澤潔といった震災関連省庁主務大臣の判断に委ねようとしたが、権限を持たない各国務大臣からは当然そのような意見は出なかったため、設置を見送った。

・自社さ連立政権という連立内閣に対する内閣官房、官僚のロイヤリティ(忠誠心)の低さも問題点として指摘されている。震災後、後藤田正晴に指示された佐々淳行が、村山を含む内閣総理大臣官邸メンバーの前で危機管理のレクチャーを行った。ところが、村山以外の政務、事務スタッフは皆我関せずの態度を取ったため、佐々が厳しく戒めたという。また、村山が震災直後に国民に向けて記者会見を開こうとしていたが、内閣官房スタッフから止められていた、との逸話も佐々の著書[3]で紹介されている。

 また、<7人の総理大臣に仕えた元内閣官房副長官・石原信雄(現 官邸機能強化会議座長)は「前例のない未曾有の災害で、かつ法制度の未整備な状態では、村山以外のだれが内閣総理大臣であっても迅速な対応は不可能であった。」(『官かくあるべし―7人の首相に仕えて』)>という証言もある。

 さらに、ロイヤリティの欠如については、こんな話も。著書が不明なので、あくまで参考。

 <阪神淡路大震災の被害拡大は、警察庁OBで元防衛施設庁長官の佐 々淳行氏が、その著書で指摘しておられるように、社会党の村山首相が、周囲に与えるインセンティブがなかったばかりに、裸の王様となり、危機管理上重要な情報を吸い上げることができなかったということにあるようである。
 そのインセンティブのなさからか、国松長官は、村山総理に災害に関する情報を報告するのは、国土庁である(緊急時に問題ありと知りつつ)として、情報を提供しなかったのである。
博士の愛した株式> 

 さて、上記■死亡時間別死者数によれば、発生日の正午まで(発生後約約6時間)に亡くなった方々は、犠牲者総数の85%を占める。

 発生日の正午以降に亡くなった方は、「不明」を含め15%、実数で808人だ。一方、自衛隊が災害現場で本格的に展開できるまで、3日かかっている。

 仮に発生直後、現地から政府へ自衛隊の災害要請があり、スムースな部隊展開ができたとしても、「2000人を救えた」というのは、明らかに過大評価がすぎる。

 と言って、個人的には村山氏を擁護するつもりもないのだけど、おおよそ首相には(?)な人が首相になってしまったのも、与党復帰のため無茶な連立を組んだ自民党の思惑が大きいわけで、首相の資質や法制度の不備、不幸の連続その他様々な理由で、理想的な災害救助体制を取れず、いたずらに犠牲者が増えたというのが実相だろう。

 その後、いくつかの法整備がなされたのだけど、実際、災害現場というのはどこも大混乱であって、阪神大震災級ならなおさらである。

 自衛隊を含め公的機関の救助活動にも限界があり、こうした教訓から、最近、自助と共助(互助)、公助の適切な組み合わせ、そもそも災害への備えを日常からしておくという「減災」という考えができてきた。

 例えば。

 http://www.dri.ne.jp/shiryo/sinsai/kataritsugu/miraie_02.htm
 <阪神大震災の場合は自助に比べて互助が非常に優れていた。生き埋めになった人を助けたのは、ほとんどが隣近所の人>

 http://www.dri.ne.jp/shiryo/sinsai/kataritsugu/kataru_07.htm
 <阪神・淡路大震災における救助活動は、自助が70%、共助が20%、公助が10%だったといわれています。大地震直後の10時間くらいは、「消防車も、救急車も、救助隊も来ない」という最悪の事態を想定すると「自助・共助」が非常に大切だと思います。>

 自衛隊への出動要請が早いに越したことはないものの、人災と言われる部分は、大地震の発生からいろいろな不幸が複合的に絡まった結果であって、リーダーや担当者が責任を問われることは当然としても、かと言って単純に誰彼が悪いと言ってすむような話ではない。

 「首長の判断が遅くて2000人が死んだ」説がいつ、どこから発生したのかは確認できないのだけど、特に防災に関して思いこみや政治的意図、権勢の誇示、とにかくどういう意図か知らないが、こういう放言はやはり、とても誠実とは考えられないし、自助や共助、公助、「減災」への視点を鈍らせる分、災害対策を考える上でも有害だとしか思えないのである。

 ところで、これに関して社民党の阿部知子衆院議員がこんなことを書いて、のちに謝罪・訂正していた。

 <阪神大震災は12年目を迎えたが、国民を災害から守ることを任務とされているはずの自衛隊が、国による命令を受けて救援に向ったのは、数日を経て後のことであった。日本の場合、自衛隊は軍隊ではないし、国土保安隊として出発し、防災のたねにも働くことを任務としてきた特別な生い立ちがあるのに、である。

 これまた「自衛隊憎し」が過ぎたのか、事実関係をすっ飛ばしての滅茶苦茶な物言いであるよう。

 知事選で石原さんが圧勝する理由の一つが、ここにあるような気がする。

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コメント

著者はジャーナリストの魚住昭だったと思うのですが、”死亡時間別死者数で大半が地震直後の段階での死亡とされていることは政治的に決まったことだ”みたいなことを書いていました。
救助活動開始までに3日掛かるとして、地震の1分後に死亡という状態と2日半後に死亡という状態を、行政では区別できなかったというのです。どちらも発見時には死亡している状態。死者数が少なければ検死解剖などを行って詳細を知ることも出来たでしょうが、数千人という膨大な数に対しては無理だったでしょう。
このような意見が出ているのを見ると石原発言に賛成する気になります。

投稿: 以前読んだ本で | 2008年10月27日 (月) 10時54分

>>「震災時には自衛隊が動くようにするけど、あなたがたも防災意識をちゃんと持ってください」といえばいいのに
>なんて言葉は出てこないでしょう。

もう少し具体的に指摘してほしいところですが、推測するにそう言ったってことですかね。
どうもそういう発言をした様子が見受けられないんで書かせてもらいましたが、
もし知事主導で日ごろから都民に対してそういう啓発をやっているのであれば上記発言は撤回します。

投稿: 通りすがり | 2007年6月 5日 (火) 10時17分

石原氏の誇張を指摘するのにはこれで十分かもしれません。
しかし、減災云々を含め自衛隊の有用性をいうのならば、
最近の災害での自衛隊出動時間を取り上げたほうが議論がわかりやすくなると思います。

何を持って「本格的な」自衛隊の活動と言うのかはわかりませんが

平成16年新潟県中越地震に係る災害派遣について(09時00分現在)
http://www.mod.go.jp/j/news/2004/10/24a.htm

投稿: hamanako | 2007年4月21日 (土) 03時57分

↑×3
発言の一部を取り出してあれこれ捏ねくり回して批判する典型ですね。石原都知事の発言がどういう流れで出てきたか判ってないでしょ?判ってれば

>「震災時には自衛隊が動くようにするけど、あなたがたも防災意識をちゃんと持ってください」といえばいいのに

なんて言葉は出てこないでしょう。

投稿: 名無しさまっ | 2007年4月16日 (月) 19時39分

そこが石原人気の理由ですよね。
どこかトンデモ科学とかカルト宗教と通じるところがあります。 
都知事より教祖様になったほうが、儲かったかもしれません。

投稿: けい | 2007年4月15日 (日) 20時26分

確かに2000人は言い過ぎかもしれないでしょう。
しかし、かといって人数が少なければ展開しなくていいんですか?
言い過ぎとはいえ防災に対する考え方としてはおかしくないでしょう?

>自助や共助、公助、「減災」への視点を鈍らせる分、災害対策を考える上でも有害だとしか思えないのである
↑の方も言ってますが、コレはいくらなんでも論理が飛躍しすぎています。
あなたは結局自衛隊が嫌いなだけにしか見えません

投稿: 名無し丸 | 2007年4月15日 (日) 09時08分

東京都民さんの言うようにいろいろやってるんなら「震災時には自衛隊が動くようにするけど、あなたがたも防災意識をちゃんと持ってください」といえばいいのに、不必要に「自衛隊を出さなかったのが悪い」と単純化して言うからおかしくなる。
知事自身が防災意識を高めるような発言をしないといけないのに自衛隊出すから大丈夫みたいに聞こえてしまったのは非常に残念なことです。

投稿: 通りすがり | 2007年4月15日 (日) 01時45分

>自助や共助、公助、「減災」への視点を鈍らせる分、災害対策を考える上でも有害だとしか思えないのである。
発言の真偽を検証するのは良いとしても、この結論は飛躍しすぎ。
事後の話しと事前の話しを無理矢理結びつけて批判するのはどうかな。
あなたの主張は「警察官を増員すれば防犯意識が低下して危険である」と同意。

投稿: 名無しさまっ | 2007年4月12日 (木) 17時10分

石原都知事は何も自衛隊の訓練や歌舞伎町の取締りばかりやってるわけじゃないですよ。災害に強い住宅供給を都営住宅ではなく提供する方法とか、減災対策も当然のように行ってる。石原都政は「安全」と「イベント」しか考えていないんじゃないかってくらい、安全対策に力を入れているように見えます。自衛隊はあくまで氷山の一角です。
もっとも東京は、世界の大都市でも圧倒的に災害リスクの高い都市ですから、これでも全く対策が足りてないかもしれませんけどね。

投稿: 東京都民 | 2007年4月11日 (水) 23時30分

♪おはようございます。
「事実」と「意見」の区別もできない方、他者の失敗を「他山の石」として教訓にできない方を代表(知事)に選んだ東京都民は、どこかでそのツケを払わされるんでしょうねえ。
まあ、他の候補者がそれだけ情けなかったとも言えるのですが、笑。

投稿: あざらしサラダ | 2007年4月11日 (水) 07時01分

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