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2007年2月 8日 (木)

カミカゼ精神的産めよ殖やせよ少子化対策、という神話

 少子化問題というと、必ず「女性の高学歴化と社会進出が、ぁうぁう」とか「身勝手な人間が増えて道徳観が、グダグダ」とか「家族の価値が、ゥフフ」というような、居酒屋保守オヤジ的原因分析が出てきて困っちゃう。

 しかも、少なくない世論がそれに賛同して、「啓蒙が必要だ」とか「家族の価値の再認識を」と同調するのだからたまらない。<追記・参考Munchener Brucke - 少子化対策の切り札は国民啓蒙というサイレント・オピニオン>自分はこれを「カミカゼ精神的産めよ殖やせよメソッド」と呼ぶことにした。カミカゼ精神論で問題が解決するなら、竹槍でB29を撃墜できてるって。

 少子化問題での成功モデルとされるフランス(1994年に1.68だった出生率が2006年には2.01に回復した)に関して、手っ取り早い調査<フランスとドイツの家庭生活調査-フランスの出生率はなぜ高いのか->があったので、ちょっと考えてみた。

 どうも、少子化対策というのは、カミカゼ精神的産めよ殖やせよメソッドとは対極のところにある。当たり前だけど。

 ○フランスの出産期(25~44 歳)の女性の労働力率は79.5%と高い。
 「女性が高学歴化し社会進出したから少子化が起こった」保守オヤジ的発想は、これだけですでに無根拠であることが証明されてしまった。
 <フランスでは、出産・育児期においても退職せず、育児休暇等の取得や保育所の活用により就業を継続している>そうだ。

 ○フランスの婚外出生割合は、1983 年までほぼドイツと同じ水準であったが、その後急激に増加し、現在は44.3%と高い割合になっている(2002 年)。

 日本の非嫡出子の割合は2%前後であるから、彼我の差は歴然としている。日本では婚外子(非嫡出子、私生児、庶子)が相続など様々な面で不当に差別されていて長い間、政治課題になっているのだけど、一部に「婚外子をアレすると家族の価値がアレする」旨の主張をする保守系議員がいて、民法改正は遅々として進んでいない。

 例えば、稲田朋美さんは「夫婦別姓」をテーマにした毎日新聞の「闘論」でこう述べている。※すでに記事が消えているのでhttp://blog.livedoor.jp/gegenga/archives/50661289.htmlから拝借。

 <私が夫婦別姓に反対する理由は、夫婦別姓は家族としてのきずなや一体感を弱め、法律婚と事実婚の違いを表面的になくし、ひいては一夫一婦制の婚姻制度を破壊することにつながるからだ。法律婚▽事実婚としての内縁▽重婚的すなわち違法な内縁--の垣根が失われれば、現行の婚姻制度そのものが崩壊する。これは法が理想とする家族像の破壊である

 wikiによれば、03年度の非嫡出子の割合は、アイスランド63.6%、スウェーデン56%、ノルウェー50%、デンマーク44%、イギリス43%、アメリカ33%、オランダ31%、イタリア10%-だそうだ。
 女性の社会進出が進み、かつ出生率も高いと言われる北欧や欧州ほど、非嫡出子が多いというのは、なんとも示唆的ではないか。
 少なくとも、少子化問題に「家族の価値」とか「法が理想する家族像」を持ち込んではいけないということだ。

 こうして見ると、少子化問題は純粋に社会制度、社会科学の問題であって、「女性の社会進出が…ぁうぁう」「家族の価値が絆が一体感が…ぁうぁう」に代表される居酒屋保守オヤジ(そういう価値観を持つこと自体は結構ですけど)、カミカゼ精神的産めよ殖やせよ方法論では決して解決しない、むしろそうした主観は時に有害である、ということが、ちょっと分かってくるような感じだ。

 さらに致命的なのは、国家予算の家庭向け支出をGDP比でみると、フランス3%、ドイツ2%、日本0.5%…il||li _| ̄|○ il||liということ。

 安倍晋三首相は、7日の衆院予算委で<子どもは国の宝。子どもを育てやすい環境を作るとともに、産み育てていく価値を再認識する必要もある=朝日新聞8日朝刊>と述べたそうだ。

 前段部分はその通りだ。ってか、そんなこと誰でも言える。俺でも言える。首相は評論家や新聞記者でないのだから、そういう環境を創るための制度設計を官僚に指示して予算を投入すればいいのである。
 むしろ後段「価値を再認識」という保守オヤジ呪縛から逃れられない点で、もうアレだ。

 まとめコピペしておくと、フランスの高い出生率は、

○高い出産期女性の労働力率(80%)と高い合計特殊出生率(1.89)
○手厚くきめ細かい家族手当
・第2子以降には所得制限なしで20歳になる直前まで家族手当を給付
・子どもが3歳になるまで育児休業または労働時間短縮が認められ、第2子以降の育児休業手当は3歳まで受給可能
・保育ママ、ベビーシッターの利用に関する補助金も利用可能
○子どもをもつ家庭に有利なN分N乗方式の所得税制
○多様な保育サービス
○35時間労働制で男女とも短い労働時間
○同棲による婚外子が一般化

 によって支えられている。
 保育所に待機児童があふれたり、生活保護の母子加算手当を段階的に廃止しようとしたりetc…いやいや、逆に少子化を誘導してるんでない?と思われるような日本とは雲泥の差である。
 階級社会であるらしいフランスの成功モデルを日本にそのまま移植してうまくいくか、という点にはまだ議論はあるだろうが、少なくとも参考になるのではないか。

 ところで、これ、内閣府の委託研究事業なんですけど、どう活用されているんでしょうか。

 いや、地味な調査研究では社会的議論を巻き起こせないと知った安倍首相は、「ホワイトカラーエグゼンプションは少子化対策にも必要」と身を挺した自爆発言をするとともに、柳澤さんにも「機械」「健全」「開明化」と言わせることで、少子化問題を社会的アジェンダにしようとしたのである。
 恐るべき奸計である、さすがだぜ、安倍さん。

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コメント

外国人労働者はいま、研修生という名目で特に地方にはたくさん来ていますが、これを正式に労働者とすると、財界と保守層のぶつかり合いがどうなるか、チョット興味ありですかね。

カミカゼ精神では“解決”しないとは書きましたけど、フランスが解決したとは言ってませんよ。あくまで成功モデルとされている、情況です。少なくとも精神論で解決できないのなら、社会政策を見直す価値はありかと思いますが。
う~ん、それと財源。フランスは消費税数十%。ただ、社会保険税(料)を含めた国民の租税負担率は、日本も相当高いはずなんですよねぇ。

投稿: 管理人@踊る新聞屋-。 | 2007年2月 9日 (金) 23時48分

解決もくそも唯一フランスが2を超えた程度であとは1.6程度じゃない。手厚くしたところでそれじゃ結局根本的に少子化は解決しないでしょ。イスラムやアフリカの方が人数多いなんて暴論が十分成り立つ論議でしかない。

投稿: いぬ | 2007年2月 9日 (金) 13時34分

とても健全だと思えない政治家が多いと思いますよ。こんな事で少子化が解決出来るわけがないです。

投稿: toshiki | 2007年2月 8日 (木) 19時15分

ヒステリックに柳沢発言を非難している方々は、
居酒屋保守オヤジの対極ということで、共産主義的フェミニズムおばさんってことでOK?
つーか、政府の無策は、少子化を推し進めて、
外国人労働者を解禁させようという経団連の
陰謀だと思いま~す。

投稿: ねこ | 2007年2月 8日 (木) 18時53分

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