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2007年1月31日 (水)

「何とかならんのかぁ」をソンタクする

 だいぶ以前、実話ドキュメントなんかにも登場する広域的な団体のそれなりの偉い人に取材した時、雑談で次のような話をされた。
 「君も知っているだろうけど、俺は弁当(執行猶予を意味するらしい)持ちだ。で、なんで捕まったか、これがひどい。ただ、★●×○に『何とかならんのかぁ』と言っただけだぞ。それで恐喝だと。非道いと思わないか」

 「えっ、いやっ、あなたの風貌と肩書きで『何とかならんのかぁ』と言ったら、間違いなく強要・恐喝ですよ、警察正しい」と心の中で思いつつ、「はぁはぁ、そうですね」と追従するしかなかったのだけど、今なら「それは忖度(そんたく)されますわぁ」くらいは言えるかも知れないわけはない。

 「この判決で、政治家が介入していないということが極めて明確になったと思う」というのを読んで、こんな昔話を思い出した。

 政治家の介入、法廷の是非、番組内容、局のガバナンスと論点は多岐にあると思うのだけど、よくごった煮されているような気がする。ここでは、「介入」の問題だけについて。

 この問題については、魚住昭さんが月刊現代2005年9月号にレポートを発表していて、それが「国家とメディア」に再録されている。
 あまりに長いので要点だけ拾う。

 <松尾氏は安倍官房副長官らの対応で「つけ入るスキを与えてはいけないという緊張感」を持ち、「みんなが不安」になって番組改変が行われたことを朝日に認めている。=p149>

 余談だけど、当時は無断録音の有無も話題になっていた。テープがあるなら出せとか、あったら無断録音だとか云々。
 それ以前に録音をめぐるトラブルがあり、社として無断録音を禁止したのが足枷になっていたようで、安倍さんが証言を変遷させた証拠は出せなかった。

 あまり取りあげられていないけど、その後、こんな記者倫理規定みたいなものが公表されている。

 <朝日新聞記者行動基準
 無断録音について
 【取材記録】
 8.取材相手の発言等の記録・保全はメモを基本とする。補充手段として録音することもある。記者会見など「開かれた場」での発言を除き、録音するにあたっては相手の承諾を得る。
 9.ただし、権力の不正や反社会的行為の追及など、その取材に大きな社会的意義があるときは、例外的に承諾を得ずに録音することがある。

 横道にそれた。

 <南裁判長は改変経過について、NHKの松尾武放送総局長(当時)らが番組の放送前、安倍晋三首相(当時官房副長官)らと面会、安倍氏が「公正中立の立場で報道すべきではないかと指摘した」と認めた
 http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007012900955

 <また、放送直前の同月29日に松尾氏らと面会した安倍晋三官房副長官(当時)が「公正・中立の立場で報道すべきではないか」と発言したことなどを受け、「その意図を忖度して指示、修正が繰り返された」とした。
 ただ、政治家が直接に指示や介入したとの原告側の主張については、「政治家が一般論として述べた以上に本件番組に関して具体的な話や示唆をしたことまでは、認めるに足りる証拠はない」とした。

 http://www.asahi.com/national/update/0129/TKY200701290245.html

 汚職事件でよく争点になる、請託の有無みたいな感じ。
 阿吽の呼吸というか以心伝心というか、政治家に公正・中立を持ち出されれば、受け手はその政治家の思想信条とかを慮るわけで、政治家だって明白な言葉で露骨に介入することは流石に問題だと認識しているのだろうから、それ以上は言わないですわね。もし言っていたら、本当に阿呆だ。
 ホワイトカラー・エグゼンプションが少子化対策とかそのまんま東氏が再チャレンジで云々とか、失言が多くで天然、真性などと言われているけど、そこまでアレでないのがなんとか救いだ。

 <改変された番組にコメンテーターとして出演していた高橋哲哉・東大教授は、(略)、一方で、番組改変への政治家の介入は、判決では「認めるに足りない」とされた。高橋教授は「政治家から『公正・中立にやれ』と言われれば圧力になることを理解しておらず、腰が引けている。判決は、何が圧力になりうるのかを示すべきだった」と話した。
 http://www.asahi.com/national/update/0130/TKY200701290380.html

 しかし、司法判断としてはこれが限界なのではないかと、素人ながらに思ったりもする。
 司法が、あまり内心に踏み込んで何かを判定するのもどうかという気がしないでもないし、言われた側がご意向を先取りしているようでもあるし。

 これを受けて、安倍首相。

 <安倍晋三首相は29日夜、NHK番組内容改変訴訟の控訴審判決で、政治家が改変に直接介入したとの原告側主張が退けられたことについて「この判決で、政治家が介入していないということが極めて明確になったと思う」と述べた。首相官邸で記者団の質問に答えた。
 http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007012900973

 いやいや。もちろん、こう言うわけですけど、この発言をどう取るかは、それこそ受け手次第ということで。

 ただ、この発言を受けて「政治介入が否定された」と判断している人は、その筋の人に「何とかならんのかぁ」と言われてみるといいんでないだろうか。
 俺は勘弁してもらいたいが。

 ってか、「この判決で、政治家が介入していないということが極めて明確になったと思う」に釣られて、何の捻りもない話になってしまった。
 「何とかならんのかぁ」ホントに。

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