ウイルス作成罪、「改正」著作権法、サイバー犯罪条約、共謀罪
<ウイルス作成罪はいつになったら成立するのか:ITpro=ウイルスを保持するだけで「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑罰が課せられることが妥当かどうかなど,ウイルス作成罪自体にももちろん議論の余地はあります。しかし悪質な新種ウイルスの生成を抑止するために,ウイルスの作成に対して厳しく処罰する法案は不可欠であり早急に審議して成立させるべきだと思います。>を読んで。
そうかな?
ウイルス作成罪新設による抑止効果自体が不明確な上、ウイルス作成の意図をどうやって立証、認定するのか、所持をどのように把握するのでしょうか。
Sempliceウイルス作成罪、民間レベルでの研究や対策記事執筆はどうなる?
ホント、どうなるんでしょう?
ウイルス作成罪は「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」=共謀罪とワンセットであります。
同じITproの<持っているだけでも罪になる? “ウイルス作成罪”の効能とは:ITpro >という記事には、こうあります。
<それについては,心配はいらない。ウイルス作成者や所持者に,感染させる意図があるかどうかで罪になるか決まるからだ。法案には,「人の電子計算機における実行の用に供する目的で~」とある。これを“日本語”に翻訳すると,「他人のパソコンにウイルスを感染させる目的でウイルスを作ったり,所持したりすると罪になる」ということである。>
確かに、法案にはこうあります。http://www.moj.go.jp/HOUAN/KEIHO5/refer02.pdf
第百六十八条の二 人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
二前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録
2 前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。
3 前項の罪の未遂は、罰する。
ちなみに「所持」についてはこう。
第百六十八条の三 前条第一項の目的で、同項各号に掲げる電磁的記録その他の記録を取得し、又は保管した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
「実行の用に供する目的」をどう立証、認定するのかというのはかなり疑問です。
ソフトウェア開発者が一夜にして豹変して、研究用のウイルス素材を「実行の用に供する目的」にすることもあるでしょう。逆手に取れば、「研究を装い、ウイルスを実行の用に供する目的で作成した」と言い立てることも可能でしょう。
また、ウイルス開発者をどう捕捉、追跡するのでしょうか。それこそ、世界中のハードディスクを24時間モニターしなければなりません。
確信犯でばらまく人間や集団があれば、彼らは簡単に捕捉、追跡されないような手段を講じるでしょう。本来の目的であるはずの越境犯罪集団の追跡には役立たずであり、法が本来の目的としない一般ユーザーに思わぬ法の網がかかる可能性が否定できないのです。※ここは皮肉というか穿った見方ですよ。
また、この辺、専門家や実務経験者に聞かないとハッキリとしたことは言えませんが、ウイルスの存在がソフト開発やセキュリティ向上に寄与した、というのも恐らく事実でしょう。だからといって、悪意を持ったウイルスの存在を肯定する気はありませんが、ウイルスとワクチンはイタチごっこにならざるを得ず、ユーザーの意識を高めるとか、それこそ高校の「情報」教科を履修漏れさせないとか、そういった手法がまず講ぜられるべきでしょう。
ウイルスによる国家レベルでの危機といえばwinnyやshareでしょうが、機密文書を含むPCにwinnyなどをインストールしたり、役所が私用パソコンを使わせている実態をなんとかする方が先でしょう。
むしろ、こんな法律ができて、ネット社会がウイルス耐性を失った時、確信犯でウイルスをばらまく集団が出てくる方が非常に脅威だと思うのですが。
それにしても、ウイルス作成罪に限らず、共謀罪を含むこの刑法「改正案」は問題だらけです。
<ネットも無縁でなくて、「もう一つはサイバー犯罪対策として、パソコン1台の差し押さえ令状により、LANのような回線でアクセスできるすべてのパソコンのデータなどの内容を差し押さえられる制度や、令状なしにプロバイダーなど通信事業者に対してメールなどの通信履歴(ログ)の保全を要請できる制度を創設することだ」http://www.asahi.com/digital/internet/TKY200506230366.html=踊る新聞屋-。 共謀罪には鈍感?なネット世論
日弁連 - 国際刑事立法対策委員会 サイバー犯罪条約とその国内法化に関するQ&A
ウイルス作成罪新設の根拠となっているサイバー犯罪条約自体、世界ではほとんど相手にされていないようなのです。
<今のところ、日本以外には、主要先進国でサイバー犯罪条約を批准した国はありません。
その理由については、市民のインターネット上のプライバシーの保護、通信の秘密などの人権保障の後退への危惧が高まっていることと、IT産業界からの経済負担の増加についての危惧が高まっているためといわれています。>
共謀罪もそうですが、“国際的要請”をでっち上げてまで、こうした取締法をつくりたがる意図は一体なんなのでしょうか。
民主党衆院議員のページに、こんな記述がありました。
<民主党修正案
ウィルス作成等の罪についての犯罪成立を、供用したものに限ることなどウィルス取得、保持等の犯罪成立要件を緩和。>
<与党再修正案
ウィルス作成、取得、保管した際の罪の成立要件の明確化を定めた。>
緩和でなくて厳格化だと思うのだけど、それはさておき。
ネット規制につながる法律がじゃかじゃかと制定されているようです。
<保坂展人のどこどこ日記 著作権法改正、厳罰化とネット規制を考える
違法にコピーされた海賊盤の音楽や映像を個人でダウンーロードしても現行法では著作権侵害とならないが、政府の知的財産戦略本部では、罰則付きの「ダウンーロード禁止」を著作権法改正の作業で行うことを検討していると報道されている。(朝日新聞11月24日)もし、この報道が事実で、「来年の通常国会で法案提出」ということになれば、今回さりげなく改正される著作権法改正の個人罰則の厳罰化が適用されるということになる。
ダウンーロード禁止で罰則となれば、メールの添付ファイルが違法コピーだった場合に、すでに「犯罪」となってしまうおそれがある。ディスプレイにファイルが表示される段階で、ハードディスクが読み込んでしまっているからだ。あまりにも大きな問題で、インターネットの世界でも大議論を巻き起こすこと必至だろう。その議論を来年以降に控えて、法定刑を倍に5年から10年にするのは、順番が逆ではないか。
法務委員会で闘っている共謀罪の「組織的犯罪」の想定事例に、「海賊盤CDを頒布することを目的として集合し、違法コピーをした著作物を売って利益を得ているケース」を法務省が例示していたことを思い出したからだ。エッ? と驚くが「著作権法違反」も共謀罪の対象犯罪となったのだ。>
<保坂展人のどこどこ日記 著作権法違反の厳罰化とネット監視社会への危惧
違法コピーの「個人の利用」について、禁止行為となり処罰規定が創設されれば、PCのアクセス内容が捜査対象となる。普通は「個人の行為」は、誰にも知られない時間と内容が多く含まれる。個人が24時間監視されている人はいないだろうし、プライベートな時間には秘密性・匿名性が含まれている。ところが、多くの人が御存知であるように、コンピュータが何時何分、どのサイトにアクセスしたかは履歴として刻まれていく。今回、共謀罪と一緒に法務省が提案しているサイバー犯罪対策を見ると、容疑が浮上した段階でプロバイダーに「サーバーの保全要請」をかけることが出来るようになる。つまり、サーバーに残る「アクセス記録消去禁令」だ。
ネットの世界の「個人の時間」を100%把握することが可能となる。しかも、捜査当局は「著作権法違反事件」の捜査のために、インターネットに向かう全国民を監視対象とすることになる。>
そういえば、winnyの開発者が摘発されたのも、著作権法違反の幇助でした。
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