« 【お知らせ】札幌、高松 メディアと警察問題のシンポ | トップページ | 「共謀罪」のメディアリテラシー »

2006年10月29日 (日)

「履修不足を言い出したのは?」。やっぱり、ソースは明示した方がよいのではないだろうか

 「取材源の秘匿」とよく混同されるというか勘違いされているのだけど、ニュース記事は基本的にソースを明示しないとならない。
 大まかに言えば、「文部科学省によると」とか「県警本部によると」とか。もっと絞れば「~課長によれば」「~副署長によれば」という感じだ。

 それが秘匿され得るのは、証言や提供資料が役所や組織その他の不正を告発するものであり、社会性や公益性があり、ソースを明らかにするとその人に不利益がある場合に限られる、ことになっている。

 <辺境通信 Henkyo News 日本の新聞記事、外国では「ソースなし」扱い>など参考。

 でも、実際はかなり曖昧だ。
 というのも、なんか大ニュースになってしまった「履修不足」は学習指導要領、教育委員会、受験システムもろもろ、問題は複雑で重層的なはずだけども、取りあえず「なんで明らかになったの」というのがいまいち分からず、「なんか陰謀じゃない(苦笑)」という感が拭えないのである。

 各紙目を通しても初期の富山県高岡南高校で、「~が分かった」「~明らかになった」とあるだけ。どうも、同校が県教委に報告したのが発端のようではある。
 ソース不明というのは、このニュースがどう利用されるか、もしくは意図的なリークだった場合、まんまと思う壺にはまる危険があるのではないかと、かなり気になるものだ。

 「なぜ今、このタイミングで騒がれ始めたのか」「どうして、ここに来て急に大きく報道され始めたかである」という疑問は、5号館のつぶやきさんやビートニクスさんも指摘されている。
 <法と常識の狭間で考えよう 単位偽装問題は教育委員会潰しか?><5号館のつぶやき  高校単位偽装問題と日本的官僚システム

 教育基本法「改定」が今臨時国会の最大焦点となり教育再生会議が始動し、教員免許更新制が中教審で答申されたりと、教育をめぐる動きが急になっている現在情況と合わせれば、こう考えるのは、むしろ当然なことだろう。
 自分の場合、偶然に出てきたニュースで、むしろそれを利用しようと大騒ぎになっている、と感じているのだけどどうでしょう。

 というのも、記者というのは、目の前にネタがあれば主義主張に関係なく食いついてしまう習性があって、仮にリークが何かしらの意図を持ったものだと薄々察知しても、ニュースであれば書きたくなるものでもある。
 また提供者に何らかの思惑がなくとも、いったん転がりだしたニュースというのは、メディア間の増幅効果もあって、渦中におかしいと思う人間がいても、なかなか止まらない。

 とにかく「履修不足」がどういう経緯で明らかになったのか、これが現場教員からの告発であれば、それを明示することはできない、してはいけないことだけど、そうでなければ、そこら辺ハッキリさせて欲しいもんである。

 そうすれば、仮にこれが何らかの意図をもって流されたものであればもちろん、これを利用した世論操作にも一定の歯止めがかかる。

 ちなみに、政治記事にしばしばある「政府高官は~」が内閣官房長官を指していることは暗黙の了解なのだけど、一般にこれを知っている人って、ほとんどいないだろう。こうした発言が世論の観測気球的に使われるのは周知の通りだ。
 しかし、暗黙の了解なら、実名で書いてもいいだろうに、プロレスみたいだ。

 なんで記者が内部告発でもないのにソースを明示できないかというと単純で、その後の取材が面倒になるからである。
 役人・官僚というのは名前が出るのを非常に嫌がる。「~課長はこう言った」なんて固有名詞を書くと、以後の関係が微妙になるのだ。担当である限り役所との関係は続くので結果、ネタを取り(もらい)にくくなる。
 たとえ関係が悪くなっても「行政情報の開示は義務だ」と正論で押し通すとか、開示請求を駆使するとか、役所には必ず派閥があってそういうのを使うと意外とネタがとれるものだけど、そうするのって、すごい疲れるし面倒。
 実際、フリーランスの人がゼロから取材しても、すごい記事をいっぱい書いているでしょう。
 一方で、電話一本である程度のことを話せる関係というのは重宝で、相手をどう思おうと、面従腹背が無難なのである。

 また、「行政は役職で責任を取る」ので異動や退職があると、過去の問題が発覚した時でも後任者が責任者となる。しかし、その後任者は当時のことなど知らないから「私は分かりません。当時の担当者に聞いてください」となり、当時の担当者のとこに行くと「もう担当でないので答えられません」という冗談みたいなことが通じ、責任を曖昧にできるところなのだ。

 ということで、責任の所在を明確にする意味でも、政策・方針決定者、発言者はカギカッコつき実名というのが、やっぱり原則だろうと改めて感じた次第。

 しかし自分の場合、あまり社会的意味を見出せないニュース、例えば「凶器はジャガイモだったことが捜査本部の調べで分かった」「県は来年度、カボチャ栽培事業に乗り出する方針を決めた」「副知事にニンジン部長内定」みたいな記事を書くことに、もう積極的な興味がなくなり、それによって多少の不利益を被ってもどうでもよくなってきたので、こんなことが言えるだけである。ま、そうは言っても半日早いだけの記事を書くというのはすごい大変な作業で、書いたら書いたで嬉しいものでもあるのは事実であり、アリバイ的に半日早い記事を書こうという姿勢は捨てていないのだけど。

 だから現役の記者を責めてはいけない。半日早いだけのニュースを先に書いた書かれたどうだまた抜かれてるぞばかやろうもう記者やめちまえああきょうもうちが抜いたいまごろ他社は朝駆けしてるだろうなアハハということに汲々としている組織の考えが変わらない限り、組織の使用人である記者はそういう風にしか動けないのである。自分も含めて。

アクセス解析アクセスランキング

|

« 【お知らせ】札幌、高松 メディアと警察問題のシンポ | トップページ | 「共謀罪」のメディアリテラシー »

コメント

まぁ、匿名ブログやってる立場からは言いにくいのですけどねぇ(苦笑)、紙面は原則署名にすべきですね。そういう流れになるのではないでしょうか。>ねこ様

投稿: 管理人@踊る新聞屋-。 | 2006年11月 4日 (土) 01時30分

ソースも重要だけど、
毎日のように、原則、署名記事にしたら?

投稿: ねこ | 2006年11月 1日 (水) 02時31分

5号館さま、こちらこそ恐縮です。いえ、ただの独り言でございます…(;´_`;)

投稿: 管理人@踊る新聞屋-。 | 2006年10月31日 (火) 22時55分

 トラックバックありがとうございました。記者さんの内幕(?)話はとても興味深く勉強になりました。これからも、よろしくお願いします。

投稿: 5号館のつぶやき | 2006年10月30日 (月) 00時31分

あざらしさん、お知恵ありがとうございます。ちょっと、当時の記事を見直してみようと思います。誰がどこにした、というのも重要ですね。

某Sさま、自分もどさくさに紛れて利用してしまえ、というのが正解かなと思いますが、このニュースはいろいろと世論誘導に使えそうですね

おかにゃんさん、情報どうもです。恥ずかしながら、いまままでまったく知りませんでした。ありがとうございますです。やっぱり、これを巧く使おうという意志がどこかにあるというのは同感です

投稿: 管理人@踊る新聞屋-。 | 2006年10月29日 (日) 12時49分

おはようございます。
この問題,数年前から告発はあり,一部地方紙でも取り上げてきていました。
だから,私が不思議に感じているのは,「なぜ,今,この時期に急に大問題になってきたのか?」という点です。
これって,ひょっとすると,誰かの告発とかそういうレベルではないもっと大きな動きが裏であったのかもしれませんね。

投稿: おかにゃん | 2006年10月29日 (日) 10時29分

最初の内は、告発だったかもしれませんが・・・ここまで大量に出てくると隠していたけど、どさくさ紛れに大放出してしまえ!とも取れますが。管理人さんの言う「責任の所在を明確にする意味でも、政策・方針決定者、発言者はカギカッコつき実名というのが、やっぱり原則」というのは、その通りだと思います。

投稿: 某S | 2006年10月29日 (日) 09時35分

♪こんにちは、お久しぶりです。
この問題が発覚した当初の朝日新聞記事に「告発があった」という表現が掲載されていたことを覚えているのですが、教師からの告発か、はたまた父兄からの告発か、誰が誰に対してどのように告発したのか気になっていました。
今はその記事を見つけられないのでわからないままですが。

投稿: あざらしサラダ | 2006年10月29日 (日) 08時54分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104998/12468934

この記事へのトラックバック一覧です: 「履修不足を言い出したのは?」。やっぱり、ソースは明示した方がよいのではないだろうか:

» 堀尾輝久氏の講演。 [右近の日々是好日。]
 こんばんは。先日、町田市で開催された教育基本法改正問題をテーマとする市民集会のなかで、堀尾輝久氏の講演が行われました。今回は、その堀尾輝久氏の講演を聞いて、私が考えたことを書きたいと思います。  堀尾氏は、講演のなかで次のような主張・議論をしました。 1、現在、教育基本法を「改正」する運動が活発である。しかし、教育基本法を「改正」する理由が不明確である。 2、政府・与党は、教育基本法を「改正」し、国民の意識を改変するこ... [続きを読む]

受信: 2006年10月29日 (日) 14時40分

» 高校の不正履修&教育基本法10条の改悪問題 + 祝・日ハム優勝&新庄について思うこと [日本がアブナイ!]
  日ハムが44年ぶりに、日本シリーズで優勝して日本一になった。  <☆より優勝していなかったのね。(・・)>   日ハム関係者、ファンの方々、おめでとうございます。m(__)m   ひとりの野球ファンからすれば、中日の巻き返しに期待する部分もあったが。でも、 日ハムのことを考えると、何より地元・北海道で優勝できて、本当によかったと思う。  <3年後ぐらいには、☆も久々に・・・と夢見るmew。(*_*)>  ラスト・ゲームになった新庄選手は、もう7回ぐらいからウルウルしていた... [続きを読む]

受信: 2006年10月31日 (火) 01時06分

» 公教育 ~何のために学校に行くのか~ 後編 [明日を拓く]
昨日の記事の続き。 まずはじめに…ここ数日の安倍首相や伊吹文科相の発言を聞いていて、一つ 気になることがある。それは、「正直者が馬鹿を見ないように…」というものだ。 規定通り倫理や家庭科を学んだ学生がなぜ「正直者」であって、 なぜ倫理や家庭科を学ぶことが「馬鹿を見る」ことになるのだろう。 むしろ、温情とかで倫理や家庭科を学ぶ機会が与えられないことの方が かわいそうなことではないのか。 この発言の根底には、やはり「受験に関係ない科目を嫌々教わっている」 という無意識の前提があるのでは... [続きを読む]

受信: 2006年11月11日 (土) 00時07分

» 社会科はどこいった? [大学教員の日常・非日常]
履修漏れ問題はいたるところでいろんな視点で語られているようです。 受験戦争オチにするな(http://d.hatena.ne.jp/dice-x/20061105#p1)とか、現場を知らんやつがごちゃごちゃいじくんな(大学教員のつぶやき語録)とか、今さら履修漏れ対策してもなぁ(http://d.hatena.ne.j...... [続きを読む]

受信: 2006年11月17日 (金) 07時23分

« 【お知らせ】札幌、高松 メディアと警察問題のシンポ | トップページ | 「共謀罪」のメディアリテラシー »