情報統制はない。選択の結果、情報が表に出てこない■本棚「メディア・コントロール」(集英社新書)
知らない事実や情報がいっぱいあって、知れば知るほど知らないことが増えていく-。RSSリーダーを使いblogospherを巡回すると、こんな状況になる。
これまで、読者や視聴者にリーチする情報や事実の取捨選択は主にマスメディアが担っていた。その取捨選択=編集が議題設定機能(アジェンダ・セッティング)だ。
ただし実は、マスメディアが議題設定機能を握っているというのは多くの部分で幻想に過ぎない。議題設定権は多くの局面で、そのマスメディアを発表やリークによってうまく操る行政が握っている。
これまで、議題設定機能について結構なエントリを書いてきたが、その教科書の一つが本書である。
人力検索はてな - 前代未聞の恐怖の法律ではないかとも言われる、共謀罪法の審議が今国会で行われていますが、そのことについてご存じですか マスメディアの扱いは十分だと思いますか 十分. / はてなの人力検索で訊ねてみました。
重要なはずのニュースなのに表に出てこない、扱いが小さい…。「生成文法理論で言語学に革命を起こした」と言われても何のこっちゃという感じであるが、そのMIT教授のノーム・チョムスキー氏は、こうした議題設定を「うまく機能している宣伝システム」と表現している。
「マス」の語源はラテン語(?)の「マッソ=こねくられるもの」だと聞いたことがある。一寸の虫にも五分の魂ではあるが、マスメディアが世論の動向、商売との兼ね合いででアッチ行ったりコッチ来たりするのは、宿命みたいなものだ。
政策論争や実績検証よりも、クノイチ刺客とチルドレンのバトル、livedoor狂想曲、そもそも事実がほとんど表に出てこない新聞の特殊指定…洗練されソフィストケートされた議題設定というのは、偶然かもしれないし意図は不明だけど、結果として目くらましとか煙幕として機能する。
小泉首相の飯島秘書官が一般紙よりテレビを重視しているというのも、洗練された宣伝システムの初歩だろう。
だいたい、記者というのは「圧力」を受ければ受けるほど萌える燃えるものだし、本紙で書けなければ他の媒体に持ち込もうとする。一般にそういう「圧力」は失敗して傷口を広げるだけだから、「圧力」というのはゼロではないけれど、言われるほどにはない。自己規制、面倒みたいな感覚は確かにあるが…。
「メディア・コントロール」は、主にアメリカの国際関係に関する事実を基にした論評と批評であるが、講演の採録なので「生成文法理論で言語学に革命を起こした」人の言葉だけど分かりやすい。
それにしても、せっかく洗練された議題設定権を握っているにもかかわらず、共謀罪のようなグロテスクで醜く田舎臭い強権的な手法を欲してしまうというのは、「宣伝システム」に機能不全が出てきただろうか。その背景に、blogospherによる情報の多様性が寄与しているとしたら、これは面白い現象だろう。
webspherやblogospherが議題設定機能をより拡散させる可能性については、<「はてブ」が新聞社サイトを殺す可能性>などで触れた。
ところで、メディアウォッチという点で、よくTBしたり頂いている「雑記帳」さんが面白い。共謀罪関連では、<フジの民主党パッシング>とか<『”与党の皆様”のNHK』はもういらない?>
同じ事実であっても、事実の断面の組み合わせによって読者や視聴者をいかようにも誘導できるという点で見本のようなケースだ。
もちろん、上記媒体に限らず、あらゆるメディアには主観が入りバイアスがかかっている。その奥には、表に出てこない事実が無数にあるという事実がある。
「メディア・コントロール」。メモしながら読んでいたので、下手なレビューを書くより、こちらを読んでもらった方が分かりやすいと思う。ただし、結構な量になってしまった。
そして民主主義社会のもう一つの概念は、一般の人びとを彼ら自身の問題に決してかかわせてはならず、情報へのアクセスは一部の人間のあいだだけで厳重に管理しておかなければならないとするものだ。実のところ、優勢なのはこちら(の概念の)ほうだと理解しておくべきだろう=11~12p
誰かを攻撃し、殺戮しているとき、これは本当のところ自己防衛なのだ、相手は強力な侵略者であり、人間ならぬ怪物なのだと思わせるのだ=37p
中東問題でも、国際テロでも、中米問題でも何でもいい--国民に提示される世界像は、現実とは似ても似つかぬものなのだ。その問題の真実は、嘘に嘘を重ねた堂々たるつくり話の下に葬られている=40p
それは女性が多少とも組織化された大衆運動、すなわちフェミニズム運動に参加したからである。組織には重要な効果がある。参加者に自分が一人ではないことを発見させるのだ。自分と同じ考えの人がほかにもいると分かれば、自分の考えに自信がもてるし、その考えや信念に関してさらに多くのことを学べる。
これらの運動はいずれも自発的なものであり、会員制組織とはちがって、一般の人びとがたがいに影響をおよぼしあってこそ機運が高まっていく。そこには決して看過できない効果があらわれるのである。
それは民主主義の危機だ。組織が発展できるようになり、人びとがテレビの画面に釘づけにされているだけでなくなれば、軍事力の行使に対する『病的な』拒否反応を示したり、その他もろもろのおかしな考えを抱く人間がでてきたりするかもしれないのだ=44p
約二対一の割合で、アメリカ国民は考えていた。違法な土地占拠や「深刻な」人権侵害があった場合には、われわれば武力を用いるべきである、と。
この助言にしたがうなら、私たちはエルサルバドル、グアテマラ、インドネシア、ダマスカス、テルアビブ、ケープタウン、トルコ、ワシントンなど、あらゆる国の都市を爆撃しなければならなくなる。
どうして誰もこのような結論に達しないのだろう?
それは、誰も事実を知らないからだ。うまく機能している宣伝システムのもとでは、いま私があげたような多数の事例について誰も知りえないのである=53~54p
とまどえる群れが社会の動きから取り残され、望まぬ方向に導かれ、恐怖をかきたてられ、愛国的なスローガンを叫び、生命を脅かされ、自分たちを破滅から救ってくる指導者を畏怖する一方で、知識階級がおとなしく命令にしたがい、求められるままスローガンを繰り返すだけの、内側から腐っていくような社会に住みたいのだろうか=71~72p
私たちの知的風土には、的の犯罪については徹底的に調べ上げる一方で、自らおかした犯罪は決してみようとしない--ここが重要だ--という原則があるからだ=82~81p
何しろ、彼らはいつも私たちに言っている。われわれは非常に敬虔なキリスト教徒である、と。
とすれば、彼らは福音書を崇めているはずだから「偽善者」の定義も記憶しているに違いない。福音書には、はっきりと書かれている。偽善者とは、自分に当てはめようとしない基準を他人に押しつける人のことだ、と=84p
ほぼ普遍的に受け入れられていて、明らかに正当かつ称賛されるべきものだとされている公式の原則によれば、アメリカはアフガニスタンが容疑者を引き渡すまで、あるいはボイスがのちに言ったように、アフガニスタンが指導者を代えるまで、アフガニスタンへの対テロ戦争を実行する資格がある。
福音書に書かれている意味での偽善者でない人なら、これを受けて当然、次のような結論に達するだろう。
ハイチはアメリカが殺人者のエマヌエル・コンスタンを引き渡すまで、アメリカに対する大規模なテロを実行する資格がる、と=92p
テロというのは、他国が私たちにたいして行った場合だけで、それが慣例なのだ=103p
政府が国民に対してやっていることに、アメリカ国民の注意が決して集まらないようにしなければならない。
政府はそこに注意を引きたくないんです。完全に逸らしておきたい。
どうすればいいか。恐怖に陥れればいいんです。人々をコントロールする最良の方法は恐怖を利用することです=134~136p
※以下は辺見庸氏とのインタビューでの発言。
サダム・フセインとは自国の国民に向かってまで化学兵器を向けるような極悪人だ、大量殺戮兵器を開発しているんだといっていました。どれも間違っていない。
サダム・フセインはそれを、現大統領の父親の支援を受けてやった、という事実です。
フセインは犯罪者です。当時も、いまも。しかし彼の犯罪と米軍の攻撃とはまったく関係がありません。この問題について西側知識人が沈黙を守るのは、あまりにも卑屈ではありませんか。
なぜなら、知識人は権力に従わなければならないと知っているから--真実を口にしてはいけないと知っているからです。
アメリカはすこぶる自由な国です。政府の活動に関して、文書は膨大にあります。しかし欠けているのは、真実を明らかにしようとする知識階級です。
負けた国だけが「悪いことをした」といわされる。第二次大戦後の東京裁判が行われたのは、日本が負けたからです。毒ガスを使ったチャーチルに対する戦争裁判もありませんでした。
9月11日のことで人々が何よりショックを受けたのは…あの行為は大変に残虐でした。しかし衝撃的なことはあれだけではない。残虐非道な行為はほかにもたくさんあります。ただ西側で起こったのはあれが初めてということだけのことです。世界のほかの人々に対して、我々がやってきたことなのです。
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コメント
ぎゃーーーーーーーっっ!ばれた。
おくればせながら、こんにちは、kocko です。アメリカのとある日刊新聞で写真を撮っています。…といったら聞こえがいいですが、ただの大学新聞です…汗。このたびは私のサイトへのコメントどうもありがとうございました。これからも世界の片隅で独り言を続けて参りますので、お手柔らかによろしくお願いします。
投稿: kocko | 2006年6月 4日 (日) 08時31分