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2006年6月27日 (火)

再審を阻む保身と権力の厚い壁■「重い扉-名張毒ぶどう酒事件の45年」

 東海テレビ制作のドキュメンタリー「重い扉-名張毒ぶどう酒事件の45年」。

 「再審を阻む権力の厚い壁」と訴えるメッセージ性の強い作品は、そこに至るまでの事実提示に説得力があり、司法制度の抱える根本的問題を見事に提示していた。
 すでに他界している関係者への取材も多く、10年越しで取材していたのだろう。

 ギャラクシー優秀賞受賞作品。http://www.houkon.jp/galaxy/43rd.html

 昔は逮捕された容疑者も会見するのだなぁとか、裁判も録画できたのかぁと時代を感じる映像が多く、また資料映像を使った事件経過の説明、新証拠を探す弁護団の苦闘と見所が多い。
 こうした事実と関係者の証言から導き出された司法の根本的欠陥について、説得力を感じる。

 これまで死刑確定事件で再審開始決定、逆転無罪となったのは免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件の4件。

 この4件の再審開始決定を出した判事12人(裁判長と左右陪席)のその後が、興味深い。免田事件の裁判長が福岡地裁所長になっただけで、5人は定年前に自ら退官したという。

 最高裁長官を頂点に8つの高裁、50の地裁所長。人事はすべて最高裁が握る。

 徳島ラジオ商事件で再審開始を決定した元東京高裁の判事がこんな証言をしていた。
 「エリート判事は再審開始を決定しない」「先輩の出した判決を覆すことはとんでもないこと」

 最高裁長官が「上級審や先輩の顔色をうかがうヒラメ判事はいらない」と訓辞したことがあるそうだが、ヒラメでなければほとんど出世できないのが実態なのだろう。
 自衛隊違憲判決を出した長沼ナイキ訴訟(1973年)の福島重雄・当時札幌地裁裁判長はその後、家庭裁判所を転々とすることとなった。

 番組で元東京高裁判事が、声を詰まらせながら「何度も裁判所に裏切られた人が、なお裁判を信じようとする、それしかないから」と証言する様子が痛々しかった。
 徳島ラジオ商事件で再審開始が決定したのは、冤罪を訴え続けた女性が他界して4年後だった。

 裁判官の保身と出世のために、無実のまま裁判のやり直しすら認められず、日々死刑を待つ身にとって、これはたまらない。
 島田事件の赤堀さんは、看守に間違って執行を告げられ、一気に髪の毛が真っ白になったという。

 また、松山事件、財田川事件の両再審請求審にかかわった元仙台高検検事長も証言している。
 検察が再審開始に抵抗するのは、「起訴した以上、守りたくなるのが心情」だからという。

 死刑事件に限らず、冤罪事件では、検察が隠していた証拠が実は無実を証明していることが多い。
 現代もなお続いている。

 ▽佐賀市農協事件の闇~発覚!自白強要と証拠隠しの実態~
 ▽布川事件38年目の真実~ダンボール9箱に隠された無実の証拠~
 http://www.tv-asahi.co.jp/scoop/update/special_back/index.html

 名張毒ぶどう酒事件にしても、死刑確定から30年が過ぎ6度の再審請求が棄却されつつ、一方で検察が法務省に死刑執行の書類を上げなかったのは、冤罪を認識していたからではないか。

 しかし、弁護側が検察側証拠にアクセスする手段はほとんどない。
 元仙台高検検事長は「裁判官は有罪の心証をつくるような証拠ばかりを見ることになる」と述べていた。

 せめて、取り調べの可視化と全証拠の開示、検察による上訴禁止を制度化しなければ、冤罪構造というのは永遠に続く。

 ところで、ローカル局の深夜ドキュメンタリーには非常に興味深い作品が多いのだけど、なかなか見られないの、見たいと思っても見られないという致命的欠陥がある。せめて、オンデマンド配信とか出来ないのだろうか。

東海テレビ | 重い扉~名張毒ぶどう酒事件の45年~
名張毒ぶどう酒事件
日弁連 - 会長声明(名張毒ぶどう酒事件再審決定について)
 
冤罪 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%A4%E7%BD%AA

「重い扉~名張毒ぶどう酒事件の45年~」(東海テレビ)
やったのは…私です

メディア・リテラシー(名張毒ぶどう酒事件再審)
冤罪の後始末・5人が毒殺されたという事実の重み

「朝飯ペロリ平らげる」事件報道の構造的欠陥(名張毒ぶどう酒事件)

名張毒ブドウ酒殺人事件六人目の犠牲者―六人目の犠牲者
名張毒ブドウ酒殺人事件六人目の犠牲者―六人目の犠牲者 江川 紹子

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コメント

相変わらずTB不可のようでございまつ

投稿: マルセル | 2006年7月15日 (土) 01時07分

 某Sさま。自分が法務省に確認したら、確か60人くらいでした。再審請求について全体を把握している機関はなくて、だいたい半数くらい(事実誤認主張を含む)ではないかと思われるようです。執行するかしないかは、かなりいろいろな判断があるようです。しかし、17年というのは…考えさせられます。
 YouTubeは著作権的に…。まさか自分がアップするわけにはいかんでしょう。いくら善意でも(w
 colddwarfさま。このまま導入できるかどうか、微妙だと思っています。

投稿: 管理人@踊る新聞屋-。 | 2006年6月29日 (木) 23時52分

今日、冤罪構造を論ずるにあたっては、
もはや以下の項目をワンセットで考えなければ
ならない段階に来ていると、私は思います。
A.裁判官のヒラメ化。
B.検察の暴走。
C.報道での物語性の追求
(といえば聞こえはいいが、要はメディアの数字崇拝)。
D.世論のメディアリテラシー。

もっともA~Cは既にいろんな方がレポートしているし、
極論すれば制度をちょこちょこ弄るだけで
解決とは行かないまでもかなりの縛りは掛けられるでしょう。
一番の問題は、Dです。
Aのヒラメの偏った視線の先にあるものも、
Bの仕えている「国策」のものさしも、
そしてCの数字が意味するものも、
とどのつまりはDの世論だからです。

それにしても
こんな民度で裁判員制度施行?
しかも重大犯罪に関して?
マジかよ。
くわばら、くわばら。

投稿: colddwarf | 2006年6月28日 (水) 18時39分

>せめて、オンデマンド配信とか出来ないのだろうか。
そういうときこそ、YOU TUBEですよ。

投稿: ななし | 2006年6月28日 (水) 02時23分

確か、先月の月刊・創に未決の死刑囚が80人近くいるとかで、待遇についてのアンケートを取っていましたが、最後の面会が17年前とかいうのには考えさせられました。その人は、再審請求を出しているのでしょうか?ついでにビックコミックスペリオールで裁判官が主人公の連載があります。なかなか興味深いです。

投稿: 某S | 2006年6月27日 (火) 22時02分

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夜中にUHBで、東海テレビ制作の「重い扉~名張毒ぶどう酒事件の45年~」を見ました。ギャラクシー賞優秀作品です。 MSN-Mainichi INTERACTIVE 放送批評懇談会 番組は、裁判所内の権力構造をはじめとする冤罪が起きる背景や、証拠とされた王冠のレプリカを制作して行った実験などの弁護団の努力を伝え、貴重な映像を用いて迫真のドキュメンタリーであったと思います。なにより40年獄中から無実を訴えている元死刑囚を救出しようとする人たちの献身的な活動が感動的。 あまりに脆弱な証... [続きを読む]

受信: 2006年7月17日 (月) 20時58分

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