NSAの違法通信記録収集は共謀罪と無縁ではない(転載)
NSAによる通信記録の違法取得問題 http://www.usatoday.com/news/washington/2006-05-10-nsa_x.htm と共謀罪についての転載。
*共謀罪が成立するといったいどんなことが起きるのかを如実に示してくれたのが今回のNSAのスパイ行為だ。
*密告、スパイ、盗聴などが蔓延するのではという危惧だ。通信記録を網羅的に監視して、他のデータベースも駆使して、一定の通信のパターンを抽出することによって、共謀の可能性のあるインフォーマルな人間関係をあぶり出すといった作業をおこなうことによって、誰を監視するか、そのターゲットを絞ってゆく。
*共謀罪が成立すればこうした大量のデータ収集に基づくデータマイニングが捜査機関にとっては必須の活動になることは避けられない。だから、共謀罪は「恐い」のです。
*とくに、エシュロンもデータマイニングの仕組そのものであり、NSAは対外諜報機関だから、今回のできごとが米国内だけで閉じた事柄だとは考え難い。
筆者の小倉利丸・富山大教授は、特にサイバー監視に非常に詳しい。
編著に「グローバル化と監視警察国家への抵抗―戦時電子政府の検証と批判」
「監視されるのは行動ではなく、コミュニケーションである。話し合うこと、コミュニケーションを行うことが『罪』になる-。監視技術は放射能のように人の健康を損なうとはいえないが、人々の信頼という最も大切な社会関係の基本条件を汚染し、人々の間に敵意を醸成させるものだ。」(上記編著、裏表紙)
以下、転載。
すでに日本のマスコミ各社も報じていますが、米国の国家安全保障局が大手通信会社と協力して、数千万人から数十億件の電話の通信記録を違法に取得していたということで大問題になっています。最初に報じたのがUSATdayでした。
http://www.usatoday.com/news/washington/2006-05-10-nsa_x.htm
この記事のあとを追って、ABCnewsもこのNSAの違法情報収集を確認しています。
また、民主党上院議員のパトリック・レイヒーも11日にNSA批判のコメントを発表している。
http://leahy.senate.gov/press/200605/051106.html
http://leahy.senate.gov/POD/06MAY/334674051120060921.ram
Center for Democracy and Technologyは詳細なレポートを発表し、NSAを批判している。
Illegal NSA Data Mining Highlights Need for Congressional Oversight
http://www.cdt.org/publications/policyposts/2006/8/
12日のDemocracy Now(反戦・平和運動を中心としたインターネットTVサイト)もトップでNSAのデータマイニングをとりあげた。
Three Major Telecom Companies Help US Government Spy on Millions of Americans
http://play.rbn.com/?url=demnow/demnow/demand/2006/may/video/dnB20060512a.rm&proto=rtsp&start=
ブッシュはわてて記者会見で、NSAの活動は、アルカイダやテロリストをターゲットした活動で適法だと強弁している。
http://www.whitehouse.gov/news/releases/2006/05/20060511-1.html
共謀罪の成立の危機にある私たちにとって、このNSAの通信記録の大量収集は、他人事とはいえない。共謀罪が成立するといったいどんなことが起きるのかを如実に示してくれたのが今回のNSAのスパイ行為だ。
NSAの通信記録収集とその分析(いわゆるデータマイニング)は、まさに、共謀罪捜査の基本的な手法でもある。報道によれば、NSAがやっていたことは、大量の通信記録(いつ、誰が誰と通話したか)を取得して、さまざまな角度から通話のパターンを抽出することだったといわれている。通話の内容がわからなくても、頻繁に通話する相手や通話の箇所、通話相手の職業などを割出すことを通じて、人間関係をあぶりだすことは可能であり、通信記録はこの意味でプライバシーに属するとなされてきた。データマイニングの手法は急速に発達してきた分野であり(民間企業は顧客分析やマーケティングに利用している)、NSAは電話の通信記録だけでなく、他のさまざまなデータベースも駆使して立体的に米国市民を監視してきたと思われる。
共謀罪が成立した場合、警察は、共謀の疑いを抱けば捜査に着手することになる。しかし、共謀があるかどうかをどのようにして警察は察知するのかということについては、これまでも多くの疑問が寄せられてきた。密告、スパイ、盗聴などが蔓延するのではという危惧だ。通信記録を網羅的に監視して、他のデータベースも駆使して、一定の通信のパターンを抽出することによって、共謀の可能性のあるインフォーマルな人間関係をあぶり出すといった作業をおこなうことによって、誰を監視するか、そのターゲットを絞ってゆく。600以上の犯罪についての過去の犯罪歴データベース、出入国管理に関わるデータベース、公安警察が収集してきた政治団体などのデータベースなどなど、さまざまなデータベースと連動させながら、捜査機関の意図に沿って監視のターゲットを絞りこむことが出来る。コンピュータによるデータマイニングの手法(システム)は、ターゲットが「暴力団」であれ労働組合であれ、同じことである。いったんシステムが構築されてしまえば、刑事警察も公安警察も使うことが可のであって、労働組合や市民運動には適用しないなどということは技術上ありえないとみなければならない。さらにいえば、日米刑事共助条約やテロ対策での情報交換が制度的に可能になっているから、これらのデータマイニングの結果は、外国の捜査機関にも提供される可能性がある。これは日本に暮らす移住労働者にとっては大きな問題だ。共謀罪が成立すればこうした大量のデータ収集に基づくデータマイニングが捜査機関にとっては必須の活動になることは避けられない。だから、共謀罪は「恐い」のです。
(注)日・米刑事共助条約については以下の外務省サイト参照
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/treaty159_3.html
NSAに関しては、もうひとつ危惧することがある。よく知られているように、NSAは英語圏の諜報機関による通信傍受システム、コードネーム「エシュロン」の元締めでもあるから、NSAの今回の通信記録の大量取得は他の英語圏諸国やさらには「サードパーティ」とよばれる日本やタイなどの諸国ともどこかで「つながる」可能性があるかもしれない。とくに、エシュロンもデータマイニングの仕組そのものであり、NSAは対外諜報機関だから、今回のできごとが米国内だけで閉じた事柄だとは考え難い。
この問題は、日本のメディアも報じているが、共謀罪との関連に言及していない。しかもプライバシー問題の理解が不十分な報道も見出せる。たとえば、朝日新聞は、「今回報じられた活動は、事実としても、通話内容自体を盗聴しているわけではなく、任意提供の情報を活用するのは、法的には問題がないとみる専門家も多い。」という書き方をしている。米国の専門家でも、先にあげたCDTはNSAの活動を明確に違法だと批判しているし、議会でも批判がでているわけで、どれだけ多くの専門家が適法だとみなしているのか、根拠も不明確だ。たぶん、この記事を書いた記者自身が通信記録くらい令状無しで取得してもよいのでは、と感じているのだろう。この記事は、通信記録がデータマイニングのシステムで分析された場合、どれほど深刻な問題を引き起こすかを理解できていない。現在国会で審議されているコンピュータ監視法案(共謀罪と同一の法案に含まれている)でもメールなどの通信履歴はプライバシー権の保護の対象であり、任意提供じたいが違法である。しかもNSAに文字どおり通信事業者が任意に提供しているなどと誰が信じられるだろうか。現実には拒否が難しいはずである。日本の場合も、通信履歴の取得には令状が必要であるという建前をとっている。しかし、捜査当局は令状をとらずに、任意に通信記録を得ることが横行してる。政府はもちろん令状無しの通信履歴取得のチャンスをねらっているわけであって、「朝日」のこの記事の書き方は、非常に軽率だ。
以下、朝日から。
米NSA「国内通話記録も収集・蓄積」 米紙報道
2006年05月12日11時39分
米政府の情報機関で通信傍受を担当する国家安全保障局(NSA)が、通信大手各社から提供を受け、数百万単位の電話番号の通話パターンを収集・蓄積する巨大な機密データベースを構築していると11日、USAトゥデー紙が報じた。対テロ戦争と個人の権利をめぐる論議に新たな波紋を呼びそうだ。NSA前長官で、中央情報局(CIA)長官に指名されたばかりのヘイデン空軍大将の議会上院での承認手続きが、さらに難航する可能性も出てきた。
同紙によると、NSAは01年の同時多発テロ後に、国内通信業界に協力を打診。3大企業のAT&T、ベライゾン、ベルサウスが通話記録を提供したが、4番手のクウェストは顧客情報だとして協力を拒んだという。ABCテレビも同日、計画の存在を当局者が確認したと報じた。
今回報じられた活動は、事実としても、通話内容自体を盗聴しているわけではなく、任意提供の情報を活用するのは、法的には問題がないとみる専門家も多い。
しかし、ブッシュ政権は、NSAによる国内での令状なしの盗聴活動が問題になった際には「国際テロ組織アルカイダとの関係が判明している人物にからんだ国際通話だけを対象としている」と正当化していた。これまで収集活動と無縁だとしてきた一般市民の国内通話記録を政府が収集・蓄積していたとすれば、いっそうの政権不信につながりかねない。
ブッシュ大統領はこの日正午、ホワイトハウスで急きょ、「政府は令状なしに国内通話を傍受していない。一般の米国人のプライバシーは厳密に守られている。我々は、何百人もの無実の米国人の個人生活を、仕掛けで調べたり釣り出したりしてはいない」などとメッセージを読み上げたが、報道自体については否定も確認もしなかった。ヘイデン大将もこの日、議会内で「NSAの活動はすべて合法で、有力議員らに対して説明している」と強調した。
しかし、議会では野党民主党を中心に「恥ずべき話だ」(上院司法委のレイヒー筆頭委員)などと強い反発が出ている。
与党共和党からは「我々は戦争中なのだ。敵については情報収集しなければならない」(カイル上院議員)と擁護の声もある。だが、ベイナー下院院内総務(共和)は疑念を表明。スペクター上院司法委員長(同)は、通信各社の代表を呼んで公聴会を開く意向を表明するなど、波紋が広がっている。
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コメント
たぶん、blogでコメントしたりTBしあって知り合う、というのは怖くて遠慮したくなると思います。
Asenseはお守り代わりって意味も含めて(笑)。Amazonのnew for youはしかし、便利なんですよね(苦笑)
投稿: 管理人@踊る新聞屋-。 | 2006年5月14日 (日) 14時45分
国家安全保障局の話は恐ろしいですね。やはり、内心の自由がむしばまれていくのは何か大切なものを失う感じがしてなりません。
グーグルの広告や、アマゾンのnew for youなども便利なんですが、自動で配信されるところに、何か不気味さを感じてしまいます。
投稿: hakohugu | 2006年5月14日 (日) 13時17分