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2006年5月11日 (木)

共謀罪、ゴールドシュタイン2006

 オーウェルの「1984年」については、それこそ素晴らしい論評が山のようにあるので、自分の出る幕はない。
 のだけど、ビッグ・ブラザーが支配する、(恐らく)旧ソ連を想起した一極支配の独裁体制に比べ、現代は分かりやすいビッグ・ブラザーはいなくて、むしろ利害や安全、脅威が相互に絡まり合い、監視される側が時に監視する側に回り、安全を求める側が時に脅威となったりと、複雑怪奇で一筋縄では解釈できない。
 どなたかがそれを、ビッグ・マザーと表現していて、そういうことにしておこう。

 オーウェル的「1984年」はやはりSF的未来像だったわけだけど、しかし、オーウェルが描いた統制の方法論というのは、時代を超えて普遍的なんだろう、ということが、共謀罪を巡る策動から浮かび上がってくる。

オーウェルはこの2作品で、(1)人為的に作りあげられた敵への憎悪、(2)所属組織が浸食・破壊される恐怖心、(3)それへの闘争心などが、上から操作されるキャンペーンによって、いかに容易に形成されるかを描写している。そしてそれらの入り交じった集団心理が、いかに強固なバリアーになるかをリアルに描き出した。Google、ボックスという真理省

「…もちろん、国民は戦争を望みませんよ。運がよくてもせいぜい無傷で帰ってくるぐらいしかない戦争に、貧しい農民が命を賭けようなんて思うはずがありません。一般国民は戦争を望みません。ソ連でも、イギリスでも、アメリカでも、そしてその点ではドイツでも同じことです。ですが、政策を決めるのはその国の指導者です。…そして国民はつねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。国民にむかって、われわれは攻撃されかかっているのだと煽り、平和主義者に対しては、愛国心が欠けていると非難すればよいのです。このやりかたはどんな国でも有効ですよ」。ナチス・ドイツの重鎮ヘルマン・ゲーリング元帥のありがたいお言葉

 外敵・脅威・危機をいたずらに煽る(脅威や危険が皆無ということではないゾ)。例えば、実態以上に治安悪化が流布されてみたり、日本ではテロの脅威がアメリカほど現実的ではないと言われれば、共謀罪の導入理由にアダルトサイト詐欺を挙げてみたり<組織的な犯罪の共謀罪に関するQ&A>(苦笑)して、一致団結・愛国心を鼓舞し、異論を唱える者に叛逆者・非国民のレッテルを貼る。
 ワンパターンだけど、意外に効果はあるようだ。

 決して、ナチス・ドイツや戦前の日本に限った話ではなくて。

愛国者法は国家がテロに関わる可能性を一方的に認めれば何でもありの恐ろしい体制を作った。時の権力者がやっていることに反対・抗議することは、権力者から「暴動」や「テロ」とレッテル貼りされるリスクを必ず伴う。歴史は、共謀罪が労働運動や体制を批判する人々を弾圧する法理になることを証明している。成立して10年か20年したら確実にそうなる。しかし共謀罪が絶対に適用されない人々もいる。それは他国を侵略したり支配するといった国家的犯罪の共謀者たちだ。アメリカにおける共謀罪と社会運動のお話

 アメリカがどんなことになっているかということは、「監視と密告のアメリカ」に詳しい。関連:<2-2 監督労働のテクノロジーへの置き換え 従業員を盗撮する所有者の権利はあるか

 ほかには、例えば。
 <暗いニュースリンク ポスト紙スクープ:『ザルカウィの脅威』は米軍のプロパガンダ><暗いニュースリンク ザルカウィと呼ばれる男達

 こういう話を読むと、ザルカウィというのは、現代のゴールドシュタインではないのかと、思ってしまう。
 ゴールドシュタインというのは、「1984年」に登場する、反政府組織のリーダーなのだが、実は政府の嘘で実際には存在しない。いわば、脅威と恐怖を煽る“逆トリック・スター”だ。
■ハロー、ビッグブラザー! 共謀罪の使い方シミュレーション>このシミュレーションは各所に転載されているのだけど、非常に興味深い。

 ザルカウィ≠ゴールドシュタイン≠、これから観に行こうと思っているのだけど、「Vフォー・ヴェンデッタ」のVみたいなものだろうか。

 「WAR IS PEACE(戦争は平和である) FREEDOM IS SLAVERY(自由は屈従である) IGNORANCE IS STRENGTH(無知は力である)」-なるほど冗談ではなさそうだ。

 <国会NOW:共謀罪の対立構図 テロを防ぐというけれど





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